ツアングシット・ワタガナラ(Tuangsit WATAGANARA, MD)
マヒドン大学部シリラート病院准教授(バンコック、タイ)
社会は、新生児/小児期の病気や怪我の治療の経過や結果が最良であることを絶えず期待している。この目標の達成のためには、胎内環境の最適化、問題の早期発見、そして適切な時期のインターベンション治療が必要である。このため超音波検査、生化学マーカーおよび無侵襲的出生前遺伝学的検査(NIPT)による胎児の早期スクリーニングが広く実践され、出生前カウンセリングおよび遺伝学的検査は、極めて大きな進歩を遂げている。
分子遺伝学的検査は、胎児のための「サーチ・アンド・デストロイ作戦」ではなく、「不完全な作戦」であるが、家族が十分な説明を受けた上で決断を下すには適切な作戦である。現在は、いくつかの疾患に対して妊娠早期に、内科/外科的胎児インターベンション治療を試みることが可能であり、動物モデルにおいて、ダウン症候群を有する胎児に対して子宮内インターベンション治療が試みられている。こうした症例では、胎児治療・分娩の専門施設での出産が好ましいだろう。
あらゆる先端技術を用いた胎児診断・治療プログラムは、世界の種々の地域で異なり、ASEAN諸国でも多様である。しかし、インターネットテレビ会議などによって、ASEAN諸国間の距離は大きく短縮している。「患者の出生前」であっても、ネットワークや教育によって、患者の家族の知る権利や最善のケアを受ける権利を阻む障害を打破することができる。
ツアングシット・ワタガナラ(Tuangsit WATAGANARA, MD)
米国ボストンにあるタフツ・メディカルセンターで特別研究員として研修を受け、特に無侵襲的出生前遺伝学的診断(NIPT)に関する研究に関心を抱いた。過去10年において、論文審査のある医学専門誌で著作した胎児医学に関する公表論文数は30編を超え、胎児手術における先駆者の1人である。また胎児医学への献身に対して、多くの名誉ある国際的な賞が授与されている。
現在、タイ・バンコクにあるマヒドン大学部シリラート病院母体胎児医学科准教授。国際イアンドナルド超音波講座の本部長でもある。
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