ドミニク・プランタズ(Dominique Plantaz, MD)
グルノーブル臨床医科大学教授(フランス)
フランスでは、他の欧州諸国よりも早期の1994年に、生命倫理法が制定された。生物学的・医学的進歩によって生じた倫理学的問題に関する法律の制定を最も積極的に求めていたのは、ほかならぬ医師や科学者であった。彼らは、自身によるイノベーションが不安定であることによって負うべき倫理的責任の負担が、医学界のみならず社会全体に及ぶことを明らかにしたのだ。出生前診断に関しては、生命倫理法において女性に医学的人工妊娠中絶を受ける権利を与える条件の項が改正された。フランスでは一般的に母体、胎児の両者の健康状態が良好であるかを確認するため、全ての妊婦に対して出生前検査が提案される。一方、出生前診断は、胎児が将来、遺伝子疾患に苦しむ重大なリスクを持つ場合、または遺伝子/染色体/形態/代謝異常などが疑われる特定の患者に対してのみ実施される。
1994年以降、女性が医学的理由によって妊娠を中絶するには、出生前診断センターから許可を受け、法律で規定された手順を踏まなければならない。医師は、母体の健康に深刻な危険が生じる、あるいは胎児が診断時点で治癒不可能と認められた極めて重症度が高い疾患に罹患している可能性が非常に高いことを証明しなければならない。さらに2011年には、医学的人工妊娠中絶を審査する学際的チームが強化された。現在のチームは、産科/小児科/遺伝学専門医・胎児超音波検査師で構成されている。こうした医療状況の中で行われる実際の出生前診断のアプローチ症例を報告する。
ドミニク・プランタズ(Dominique Plantaz, MD)
グルノーブル臨床医科大学周産期医療センター小児医学教授。専門は、小児血液がん腫学で、その遺伝的素因との関連についても広く関心を抱いてきた。脳腫瘍、神経芽細胞腫、白血病、リンパ腫、移植片、骨腫瘍、肝芽腫、およびその他すべての小児血液がん腫関連疾患に関する臨床試験において、治験責任医師または治験分担医師を担当する。
論文として「17番染色体の増加はCGHによる神経芽細胞腫で最も検出頻度が高い異常」、「神経芽細胞腫患者における17番染色体長腕17qの増加と有害転帰」など多数。フランスにおける代表的なグルノーブルの出生前診断センターにおいて、さまざまな課題を審査する学際的チームを率いてきた実績をもち、フランスやその他のヨーロッパ各国における出生前診断の現状にも詳しい。
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