出生前・後のシームレスケア実現を

未来の胎児と医療を考える会

活動

出生前診断:新しい医療技術はどのように導入されるのか?

マーク・エバンス (Mark I. Evans, MD)
マウント・サイナイ医科大学教授 (アメリカ)

先天性疾患に対する出生前スクリーニングは、単に女性に年齢を尋ねるところから、次第に洗練された生化学検査や超音波検査へと発展してきた。しかし、スクリーニング検査は単に確率的な可能性のみを示すもので、その後、羊水穿刺や絨毛検査などの確定診断を下す必要がある。

最新の出生前診断である細胞フリー胎児DNA手法(無侵襲出生前検査としてのNIPSであり、日本では新型出生前診断とも呼ばれている)は、大きな技術革新によってもたらされたスクリーニング技術であり、これまでのさまざまな出生前診断にとって代わるだろうと示唆する者も多い。 

しかし、このような見解は、ダウン症候群などに代表されるような深刻な疾患の全リスクを懸念している多くの患者を困惑させてもいる。そしてその結果として、米国ではこの2年間にその使用が急増している新しい技術革新に対しては、改革への社会的・文化的受容度、その情報を使用する意思、あるいはその技術利用にかかる費用などによって容認の程度に差がみられる。しかしながら、これらの技術に対しては、社会に新しい情報を提供するためのものだとの普遍的理解も必要である。その情報を踏まえてどのような選択をするのかが、まだ生まれぬ子供たちの親の仕事であり決断なのである。

マーク・エバンス (Mark I. Evans, MD)

タフツ大学を卒業後、ニューヨーク州立大学ダウンステート・メディカル・センターで医学の学位を取得。シカゴ大学産婦人科で研修医、国立衛生研究所(NIH)の遺伝学の特別研究員などを経て、ウェイン州立大学の産婦人科特別教授および学科長、分子医科学/遺伝子学教授、ならびに病理学教授、さらにはフィラデルフィアにあるMCPハーネマン大学の産婦人科学教授および学科長を歴任。現在、米国の胎児医学財団(Fetal Medicine Foundation of America)理事長、マウント・サイナイ医科大学産婦人科学教授、国際胎児医学・外科学会(IFMSS)理事長として世界的な活動を行っている。

産科学の領域においては、染色体異常の検出を目的とした出生前診断や子宮内胎児の筋生検手技などの開発、さらには世界的規模で、胎児の後頸部(項部)浮腫(NT)スクリーニングおよび研修の開発を支援。胎児治療の分野でも多くの先進的な治療法を開発した先駆者である。またNIHの助成による母体血中胎児細胞研究の責任者でもある。

女性の人権保護を目的とした活動に関しても評価が高く、米国家族計画連盟および全米女性機構から表彰を受けるなど、長年にわたりWho’s Whoにおける米国内の産科医上位40人のうちの1人として、女性にとってのベストドクターに選ばれている。

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